日本近視学会は、日本眼科学会関連学会
として承認を受け、活動しております。
近視とは、「眼球の形が前後方向に長くなって、目の中に入った光線がピントが合う位置が網膜より前になっている状態」です。
凹レンズで光線の屈折を弱め、ピントが合う位置を網膜上に合わせることにより、鮮明に見えるようになります(注;病的近視を除く)。
眼は外界のものを明瞭に見るために、緻密に作られた光学系であり、よくカメラにたとえられます(図1)。
カメラのレンズに相当するのが、角膜(かくまく)と水晶体(すいしょうたい)で、光を通し屈折する働きがあります。カメラのフィルムに相当するのが、網膜(もうまく)です。
角膜や水晶体で屈折した像が網膜面上にピントが合うことにより、外界の物体がはっきりと良く見えることになります(図1)。網膜面上にぴたっとピントが合うかどうかは、①レンズの屈折力(角膜屈折力、水晶体屈折力)と ②レンズ前面から網膜までの距離(眼軸長;がんじくちょう) とによって決まります。
正視とは、「無調節時に無限遠からくる平行光線が網膜面に結像する眼である」と定義されています。
ヒトの眼には、オートフォーカス機能があり、遠くのものから近くのものまで焦点を変える作用があり、これを調節(ちょうせつ)と呼びます。
調節により屈折度数が変化してしまう可能性があるため、調節が働かない状態で、という但し書きがされています。
正視以外の状態を屈折異常といいます。これには近視、遠視、乱視があります(図2)。
近視は、平行光線が無調節状態の眼に入った時、網膜の前方に結像してしまう状態です。これに対し、遠視では、網膜の後方に結像します。乱視では平行光線が眼に入る角度(たとえば、水平方向と垂直方向)により結像状態が異なり、1点に結像しない状態をいいます。
近視の原因は、程度が軽くても強くても、主に眼軸長が長いことによると考えられており、レンズ系(角膜や水晶体の屈折力)の影響は少ないと思われます。
近視の強さは、裸眼視力ではなく屈折度数により分類されます。屈折度の単位はジオプトリ―(通常Dと書く)が用いられています。これはレンズの焦点距離をメートルで表したものの逆数です。近視はマイナスで表し、(必要に応じて調節麻痺を行った際の)等価球面屈折度数が-0.5Dまたはそれを超える状態を言います。
強さによる分類は、庄司の分類が用いられています。
強さによる分類のほかに、単純近視simple myopiaと病的近視pathologic myopiaに分ける分類があります。
単純近視とは、視機能障害を伴わず眼鏡レンズなどで容易に矯正できるもので、これにはいわゆる学童近視school myopiaも含まれています。
一方、病的近視は矯正視力の低下など視機能障害を伴い、失明の原因となる近視です。
病的近視は、眼球後部の変形を特徴とし、それにより視神経や網膜が機械的に障害され、失明を起こします(⇒病的近視とは何か)(図3)。
日本では、小児における近視の頻度を調べた統計はありませんが、文部科学省学校保健統計調査報告書において、多くが近視もしくは近視性乱視と考えられる裸眼視力0.3未満の低視力者の割合が調べられています。それによると、1979年には小学生の2.7%、中学生の13.1%、高校生の26.3%でしたが、2010年には小学生の7.6%、中学生の22.3%、高校生の25.9%と、小学生では3倍に、中学生では1.7倍に増えています。
成人における近視の頻度については、Sawadaらが2000から2001年に多治見市において無作為に抽出した40歳以上の3,021人を調べたところ、-0.50D未満の近視は全体の41.8%に、-5.0D未満の近視は8.2%にみられたと報告しています(Ophthalmology 2008より)。
近視の発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与すると考えられています。環境因子としては、近業や屋外活動の関与が報告されています。
近視のうち、特に病的近視では遺伝的要因の強いと考えられることが多数の強度近視患者の臨床遺伝学的研究から示唆されています。遺伝子解析の結果から、主に病的近視に関与する遺伝子変異が報告されていますが、今なお、決定的な遺伝子は明らかにはなっていません。さらに、単純近視と病的近視とが同じ要因により起こるのか、両者は同一線上にある疾患なのか、についても明らかではありません。今後の研究の進歩が望まれます。
元来、乳幼児期には目は軽度の遠視であり、眼球の成長に応じて正視となり、学童期以降に近視が進行するのが一般的ですが、まれに幼少期からの強い近視(先天近視)がみられます。
先天近視は様々な先天眼疾患や全身疾患に伴うことも多く、早期に発見して他に異常がないか十分な検査を行う必要があります。代表的な疾患としてステイックラー症候群、マルファン症候群、家族性滲出性硝子体網膜症、早発型緑内障、先天停止性夜盲、網膜有髄神経線維などが挙げられます。
また、未熟児では、角膜や水晶体の発育不全によって近視になりやすいと言われています。
日本眼科医会が近視啓発動画を作成しました。 「近視のメカニズム」や「近視になった人の発症リスクが高いとされる緑内障」などの症状をアニメ化して、Youtubeで配信しています。 児童生徒やその保護者、教育関係者にもわかりやすく伝えていますので、是非ご活用ください。