日本近視学会は、日本眼科学会関連学会
として承認を受け、活動しております。
病的近視とは、「屈折度数は問わず、びまん性脈絡膜萎縮以上の萎縮性変化(特に乳頭耳側)もしくは、後部ぶどう腫を有する状態」です。
多くの近視では、眼鏡などによる矯正により良好な視力を得ることができます。
しかし、近視の中でも「病的近視」という状態になると、眼底などに様々な合併症を生じ、矯正をしても視力がでない状態となり、ひどくなると失明する可能性があります。視覚障害1級の原因疾患として、病的近視は我が国で4番目に多い疾患です(表1)。
1位 | 緑内障 | 25.5% |
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2位 | 糖尿病網膜症 | 21.0% |
3位 | 網膜色素変性 | 8.8% |
4位 | 病的近視 | 6.5% |
5位 | 黄斑変性 | 4.2% |
平成17年度厚労省 網膜脈絡視神経萎縮症調査研究班報告書 |
病的近視では、眼球後部の変形(図1)などにより、特に視機能に重要な視神経や黄斑部(おうはんぶ)網膜などの部位が機械的に伸展されるとともに変形し、様々な病的近視特有の眼底病変を起こしてきます。
正視眼では眼球はきれいな正円であるが、
病的近視眼では特に眼球後部が後方に突出し大きく変形している(図1)。
病的近視の方では、網膜や脈絡膜が高度に菲薄化し、様々な萎縮性病変を生じます。
これには、びまん性萎縮、限局性萎縮、ラッカークラックなどがあります(図2)。
病的近視の患者さんの約1割に、黄斑部(おうはんぶ)という網膜の中心部分に出血が生じます。病的近視の患者さんでは網膜と脈絡膜を隔てるバリアのような働きをしているブルッフ膜という膜に亀裂が入ることがあり、この亀裂を通って脈絡膜から新生血管(しんせいけっかん)という病的な血管が網膜に入り込んで増殖してしまう病態です(図3)。
突然の視力低下や変視症(ものが歪んでみえる)で発症することが多く、早期診断、早期治療が重要です。治療は、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する抗体を眼内に注入します。
病的近視では眼球が前後方向に伸びる際に、伸びきれなくなった網膜がはがれてきてしまうことがあり、網膜剥離またはその前段階である網膜分離を起こします。病的近視の方の約1割にみられます。放置すると網膜剥離や黄斑円孔といった、より重篤な合併症に進行する危険があります。診断には網膜の断層像を観察することができる光干渉断層計(OCT)という検査が有用です(図4)。進行すると手術が必要となることがあります。
病的近視の方で意外に見過ごされやすいのが視神経障害です。近視は緑内障の危険因子でもあり、また眼球の異常な伸展により、視神経やその神経線維が機械的に障害されやすく、視野障害の原因となります。病的近視では黄斑部病変を合併するために視神経障害が見過ごされやすいため注意が必要です。